福島県-東北地方太平洋沖地 視察レポートの掲載

 概要 

 福島県の相馬市といわき市を視察しました。
必要な物資等は予め当協会から県訪問看護ステーション連絡協議会に確認し、当協会支援物資と日本看護協会支援物資を併せて届けることができました。
いわき市には当協会から常務理事の上野桂子、事務局長の清水範明が向かい、現地で結城光氏(福島県訪問看護ステーション連絡協議会理事)にご同行いただき、
訪問看護ステーションかもめ、わかば訪問看護ステーション、訪問看護ステーションぱれっと、おりづる訪問看護ステーションを訪問しました。
相馬市、南相馬市には当協会から事務局次長の宮崎和加子が向かい、現地で 渡部典美氏(福島県訪問看護ステーション連絡協議会副会長)、門馬君江氏(同役員)にご同行いただき、
沖ノ内訪問看護ステーション、リハビリ訪問看護ステーションつばさ、訪問看護ステーション四季、訪問看護ステーション万葉、訪問看護ステーションゆうゆう、
やまもと訪問看護ステーション(宮城県)を訪問しました。

いわき市の視察、右から上野桂子氏、結城光氏、清水範明氏

相馬市の視察、右から渡部典美氏、門馬君江氏、宮崎和加子氏

 訪問看護ステーションの状況 

 市街地には津波の被害はなく、地震による倒壊なども少ないようでしたが、津波があった沿岸部では瓦礫が残るだけの大きな被害がありました。
 福島県では 訪問看護師の死亡者はいませんでしたが、家族を亡くされた方、家が流された方などが少なくない状況でした。
いわき市、相馬市では物資の流通もあり、ステーションの訪問が再開されていました。利用者の状況は津波の死亡・行方不明は数名程度でしたが、
福島第一原子力発電所の事故の影響で避難した利用者が多くいました。
 南相馬市の状況を伺ったところ、原発の20キロ圏内、20キロ~30キロ圏内に位置していることもあり、物資の流通が滞っている状況があるということでした。
南相馬市のステーションの一部は休止状態ですが、住民が徐々に戻り始めているということでした。視察後に計画的避難区域に指定され、退避が必要となりました。
 放射能の被害という事態がいつ終息し、地域で安心して生活できるのかがわからない中、地域住人にも疲労の色が見え、ステーションのスタッフの中にも避難をせざる得ない方がいました。

海岸の近くは津波による大きな被害があった

 訪問看護ステーションパレット(いわき市)は建物の倒壊等の震災被害はありませんでした。震災直後は避難所への訪問、ガソリン不足のため徒歩での訪問を行っていました。
避難していた利用者が徐々に戻ってきているが、現在も県外の特養などに避難している方々がいるとのことです。

訪問看護ステーションパレットの視察

 おりづる訪問看護ステーション(いわき市)の母体法人は総合病院等を運営しており、沿岸部には精神病院、療養型病院、老健施設があり津波の被害を受けました。
老健施設建物には本部機能があり、訪問看護関連のデータサーバーも一括管理されていたが津波被害で失われ、ステーションのレセプト請求に時間がかかっているということでした。
震災直後はガソリンがなく訪問できなかったが、2週間ほどで訪問ができるようになり、ステーションが完全に稼働できたのは4月1日からということでした。

おりづる訪問看護ステーションの視察

 訪問看護ステーションかもめ(いわき市)は医療生活協同組合立で、同法人の小名浜生協病院の2階に事業所があり、建物に地震被害はありませんでした。
また全国の生活協同組合から物資等の支援を受けることができました。
震災直後の安否確認は海岸沿いの独居の方を優先して行い、在宅酸素、吸引、胃ろう、気管切開の方は入院していただいたということでした。
 視察時は訪問できる地域には行っているが、原発事故の影響で屋内退避の地域は電話での対応となっているということでした。

訪問看護ステーションかもめの視察

 わかば訪問看護ステーション(いわき市)は同法人の病院建物に事務所があり、小名浜の海岸につながる河川から津波が上がってきたため建物の1階は浸水しましたが、
ステーションは2階だったため直接の被害はありませんでした。
駐車場にあったステーションの車と職員の車が浸水し、当日は帰宅できなかったが、翌日代用車を2台手配して対応したということです。
 利用者の状況は避難所で低体温になり入院した方や原発の関係で急遽施設から自宅へと戻された方がいて、家族に負担がかかっている状況があるということでした。

わかば訪問看護ステーションの視察

沖の内訪問看護ステーション外観

事務所で話を伺った

訪問看護ステーションゆうゆう

事務所で話を伺った

 福島県では津波の被害は岩手県、宮城県と比較すると限定的であるものの、福島第一原子力発電所の事故による放射能の影響が甚大であり、他の被災県とは異質な状況でした。
  復興に向けては福島県の状況に応じた支援が必要となると思います。